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名古屋学芸大学 岩野一郎先生の講義に突撃!

3DCGアニメーション業界で“名物先生”として知られる岩野一郎先生。大学卒業後、デザイン事務所での勤務を経て、トライデントコンピュータ専門学校で教鞭をとり、現在は名古屋学芸大学で学生の指導にあたっています。およそ20年間、岩野先生はCGクリエイターを目指す若者たちの育成に尽力されており、現在その教え子の多くが業界で活躍しています。
今回はCG-ARTSのメンバーが岩野先生のクロッキーの屋外授業に参加し取材した内容を教育現場レポートとしてご紹介します。

岩野先生との出会い。クロッキー授業密着のきっかけ

岩野先生との初めての出会いは、当協会の第20回学生CGコンテストの表彰式だったと記憶している。岩野先生が当時在籍されていたトライデントコンピュータ専門学校の学生作品「Willy`s Night of Surprises」が優秀賞を受賞された年である。同作は、その年のコンテストでは、3DCG作品で唯一選出された作品で、日本の学校でピクサー映画のような高レベルな作品を作りあげられる学生さんがいるのか、と感服した記憶が今でも鮮明に残っている。

さて今回、ひょんなことがきっかけで、まる一日、岩野先生の講義に密着することになった。当初は、午後の講義の中で検定試験など当協会の紹介をさせていただく予定だったところ、「午前中は東山動物園でクロッキー会の授業あるのですが、そこから参加されませんか?」と前日にお誘いいただき、せっかくの機会なので「いきます!」と勢いだけで返事をして、クロッキー授業にも参加することになった。

いざ、クロッキー授業潜入!東山動物園へ

前置きが長くなったが、このクロッキー授業の様子をリポートしたい。
参加者はアニメーション専攻の3、4年生。手描き、CG問わずアニメーション制作を専攻にしている学生さんと、岩野先生や他の先生方や助手さんらを合わせて、30名ほど。会場は名古屋の東山動物園。東山動物園は私が幼少のころから遠足などで通った思い出の動物園でもある。
朝9:30に正門前に集合し、いざ入場。先生から簡単な説明をうけ、皆、自由に動物園に散っていく。

晴天の中、先生と助手さんのチームについていくことに。動物を見つけては立ち止まり、クロッキーをしていく。なんと尊い時間なのだろう!いくつか実例を紹介していく。

のびのび過ごす動物たち。クロッキーのコツとは!?

・サイ

鎧を身にまとうサイ。よく見ると当日の日差しの強さも相まって、体のパーツがロボットのようにくっきり分かれていて、パーツごとの質感もはっきりと変化しているので、ラインとしても捉えやすい、よい練習台のように感じた。

・コモドドラゴン

パンフレットの表紙を飾るほど主役?扱いのコモドドラゴンではあったが、じっと動かず、木の陰にいたこともあり、正直いうと絵的には映えない…。観覧者も多かったので、ある学生さんが遠慮して写真だけ撮り、その写真をもとに描いている姿を先生方が目撃しての一言!「それ、意味ないよー!せっかくモチーフが目の前にいるのだから、立体を見て、それを紙に描かないと!それがクロッキーの練習だから」と指導する姿が見られた。立体を目で見て、脳を通じて、手で描くことがやはり重要な訓練になる。

・テナガザル

体が真っ黒でラインをとらえにくくて意外と難しい。しかも時折オジサンのように叫び声を発するのでビビらされる。

・コアラ

東山動物園の初代名物といえるのではないか?ドラゴンズのマスコットキャラクタのドアラも、この動物園のコアラが起源。愛くるしい表情・ポーズをゆったりした動きで見せてくれる。クロッキーする側からすると練習台にもってこいのモチーフである。

・ゴリラ

イケメンゴリラで有名なシャバーニ。助手さんがどうやって描くのか、後ろからじっと観察していた。すると、まずは大まかに三角をとらえて、そこから大きなパーツ分け、その後陰影をつけて、細部に入っていく。なるほど、大枠から進めるというCGアニメーションの制作工程とも共通する点があると感じた。

・アシカ

ゴリラ以上に動きの激しかったのはアシカたち。水槽を掃除してもらって水を張っている途中だったこともあるのか、とにかくはしゃいで動き続けているので、あの奇麗な流線形をとらえる間を与えてくれない。

「これだけ動きの激しい動物はどのように描くのですか?」と素人質問を岩野先生にぶつけてみると「ゴリラもそうですけど、ポーズを変えたら違うポーズを描き始める、また似たようなポーズに戻ってきたらそのポーズを描き戻る感じで、一瞬一瞬を切り取る訓練ですね」とのこと。

私などは、じっと見ているうちにアシカが動いてしまうので、輪郭をとらえることすら難しくて…。それを先生たちは、迷いなくサッサッと描いてしまうのだから、本当にすごいと思いました。

クロッキーおつかれさまです!描いて見せて、ぐんと成長!

そんなこんなで、あっというまに2時間半が経過し、最後に皆で集まって互いに描いた絵を見てまわる。それぞれの作品を見て成果を称え合う時間はとても貴重だなと感じた。他者に自分の作品を見せるというのは、なかなか勇気がいるものだが、「見せる」ことは、想いもよらぬいろいろな気付きにもつながり、自身の成長を加速させる重要なステップだと感じる。

岩野先生は、「クロッキーっていうのは、動くものの一瞬をとらえてラインやその動きを描く訓練で、それがアニメーション制作のポージングにも生きてくる。人間のジェスチャードローイングも良い訓練になるので、引き続きやっていきましょう!」とまとめられた。

このレポートを読んで「あ、いいな」「やってみようかな」と思った方は、ぜひ、実際手を動かしてやってみて欲しい。実は、やってみよう思うだけで、実際行動する人は本当に少ないので、その「行動」を積み重ねることが大きな差になって自分の成長につながっていく。このレポートが何か皆さんのきっかけとなれば幸いである。

大学のリアルな空気にふれて、感じたこと

クロッキー授業のレポートは以上であるが、その後、学校にお邪魔し、CG演習の講義で検定をはじめ、いろいろな活動の案内をさせていただいた。先生たちと学生さんとの距離感も近く、話を熱心に聞いてくれた。さらに、岩野ゼミ4年生の打ち合わせに参加させてもらい、まさに就活戦線真っ最中の学生さんに対して、私のあまり参考にならないであろう…いや、真似してはいけない就職活動の記憶を語りつつ、彼らの直面する悩みに応える時間を、新幹線に間に合う時間ギリギリまで過ごした。

今回岩野先生とご一緒させていただき、リアルな授業の様子を見学できて非常に勉強になった。今後の名古屋学芸大学の教育成果に注目したい。

★おまけ

絵の教育も専門的に受けたことのない著者がメモ帳にペンでスケッチしたものもさらします。

公開日:2025年5月9日

取材・文・写真:
小澤賢侍(CG-ARTS 教育事業部 事業部長)
学校教育・制作現場を経験した後に2011年からCG-ARTSにて産学を繋ぐ活動を行っている。

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